●トゥールグール2015年07月30日
トゥールグール Tourgoule / Teurgueule
その北部にイギリス海峡をのぞむノルマンディ地方。実際、8~10世紀に北ヨーロッパで勢力をふるい、恐れられていたバイキングこそが、ここに「ノルマン公国」を築いたのだという。ノルマンディ出身者に大柄で金髪碧眼を持つ人が多いのも、まさにその血を感じさせるひとつ。そしてトゥールグールもまた、海に関わるお菓子なのである。厚手の陶製の鉢に米と牛乳と砂糖を入れ、古くは暖炉や竃の隅に置いて、今はオーブンの低温で、数時間以上火を入れると、表面には乳脂肪が厚さ3㎜近くの膜を作り、その下からはとろりと甘く煮詰まった米が現れる。濃いノルマンディの牛乳で肌色に煮詰まった米は保存がきき、腹持ちがよいため、かつては船乗りが携えた食料だったとか。「トゥール」はフランス語のtordre(=ぐるぐる回す)から派生しており、「グール」は「口」を表す語。吹きすさぶ北風の中、海に出て行く男たちにとって、濃く甘い米のお菓子は、確かにいつまでも呑みこまず口の中にとどめておきたい味わいだっただろう。
○用語・人名等解説
米 riz
アジアでは主食の米も、フランスでは野菜のひとつ。茹でて料理のつけ合わせにしたり、野菜と混ぜてサラダにしたりする。ノルマンディを中心とするフランス北部や、地中海沿岸のカマルグは特にお米と親しい地域。タイ米のような細長い米に対して、リ・ロン(riz rond=円いお米)と呼ばれる日本風の米が食される。