●カヌレ2015年07月30日
カヌレ Cannelé
古くボルドーの修道院で、「カヌラ」と呼ばれる棒状の型を使って作られていた小さな焼き菓子が発祥といわれる。しかしこのお菓子は、1790年代のフランス革命前後の混乱によって一度消え、再び現れたのは1830年頃である。当時は青銅(ブロンズ)製の型で、トウモロコシ粉を混ぜた蒸し焼き方式で作られていたという。ツヤを帯びてカッチリとした表面は、蜜ろうを型に塗って焼くため。かつて修道院でろうそく作りに使われていた蜜ろうを活用したことが、始まりとされる。その後、熱をやわらかく伝える銅で、飾りに“縦溝のついた”(=cannelé)型が作られるようになった。溝の凹凸で表面積が多くなり、かりっとした食感が印象的な外側と、もっちりした中身が独特のコントラストを成すカヌレは、こうして誕生したのである。カヌレの伝統的なレシピは、ボルドーにあるカヌレ協会が伝え守っている。
○用語・人名解説
蜜ろう Cire d’abeille
働きバチの腹部より分泌される蝋液が固まったもの(英名ビーズワックス)。現在ではろうそくをはじめ、化粧品やクレヨン、石けんなどに自然材料として使われている。採取するにはハチの巣と、「蜜蓋」と呼ばれる、巣の中に集められた蜜をフタしている部分とを水で炊き、溶け出した蝋分を再び冷やし固める。エジプトなどでは古代より画材として、中世ヨーロッパでは教会において、ろうそく作りに使われていた。儀式用に大量に必要なろうそくのため、修道院における養蜂の主目的は蜜ろうであったともいわれている。