●ナンシーのマカロン2015年07月30日
ナンシーのマカロン Macaron de Nancy
8世紀にすでにイタリアの修道院でつくられており、フランスには16世紀にカトリーヌ・ド・メディシスが持ってきたなど、諸説あるマカロンのエピソード。原材料は共通するが、地方の数だけマカロンがあるといわれるほど、形やつくり方を少しずつ違えた“ご当地マカロン”が、フランス全土に散在している。これはそのひとつ、ロレーヌ地方・ナンシーに伝わるもの。平たくてやや薄い形、表面にはたくさんの“ひび”が入っている。糖液を別に煮詰めておき、それを他の素材と混ぜ合わせるつくり方も独特。ナンシーにはシャルルⅢ世の娘、カトリーヌが建てた修道院があり、ここに仕える修道女たちによってつくられていたマカロンである。ところがフランス革命が起きた際、迫害を受けた彼女たちのうち2人が、ある家にかくまわれた。彼女たちがお礼につくった自慢のマカロンが、その後、徐々に広まっていったといわれている。そのためナンシーのマカロンには、「マカロン・ド・スール(修道女のマカロン)」の異名がつけられている。
○用語・人名解説
修道院 abbaye, monostère
フランス菓子が発展してきた中で、大きな役割を担ってきたのが修道院。自給自足でひたすらにつましいイメージがあるが、実際は宗教の力による経済力を持った修道院も多かった。それを元手に大量生産が可能な大きな窯を所有し、製品を売ったお金で貧しい人への施しにあてる、合理的な生産活動が行われていたという。現在でも修道院では研究熱心な修道女・修道士たちによってマカロンをはじめ、ショコラやビスキュイなど様々な製品がつくられており、敷地内にブティックを備えたところもある。